タヌパック短信 34

石鹸生活の勧め(1)



 花粉症やアトピーなどが話題になる季節になりました。
 いい薬はないか? いい洗剤はないかというような話題が出るたびに、そもそも石鹸を使っているの? と訊き返してしまいます。
 皮膚科が勧める「弱酸性石鹸」を使っているとか、美容院でしか売っていない一本五千円もするシャンプーを使っているとか、ひどいのになると「うちはすべての洗剤がアムウェイだから大丈夫」などという答えが返ってきて、その度に石鹸講釈を始める羽目になります。ちなみに酸性の石鹸などありえないし、アムウェイは他社製品同様、ごく代表的な合成洗剤です。
 そもそも、合成洗剤を使う生活は、環境汚染と同時に、肌荒れやアトピー、若禿げなど、直接自分の身体を痛めつけることだという認識が、まだまだ根づいていません。
 そこで、再び「石鹸の勧め」です。
 三回連続でやろうと思います。

◆石鹸売場には石鹸は売ってない


 日常生活のあらゆる洗浄剤を合成洗剤から無添加石鹸にかえる……アトピーや若禿げに悩むのはそれからにすべきです。
 第一段階としては、洗濯と洗髪以外の洗剤すべてを、無添加固形石鹸にしましょう。これは簡単にできます。
無添加石鹸は、たいていのスーパーで売っていますが、「固形石鹸」が並んでいる商品棚にはありません。そういう場所にあるのは、大手メーカーが作っている化粧石鹸や薬用石鹸で、これは無添加ではありません。パッケージの裏を見てください。〈指定成分・エデト酸塩、パラベン、赤色213号……〉などと書いてあるはずです。
「指定成分」というのは、すでに皮膚障害を起こす恐れがあることが分かっている物質で、百種ほどあります。
危険を冒してまでこうした物質を添加するというのは、元になる石鹸の品質に自信が持てないからです。高品質の石鹸は石鹸臭も強くなく、香料など不要です。
では、品質の高い無添加固形石鹸はどこに売っているのか? 答えは「台所用洗剤売場」です。合成洗剤に混じって、「ふきんソープ」「白いふきん洗い」「キッチンソープ」などの商品名で、ひっそりと小さな固形石鹸が売られています。成分表示は「純せっけん(脂肪酸ナトリウム)97%」などとなっています。これが無添加固形石鹸です。価格は一個百二十円から二百円くらい。品質は、値段の高い化粧石鹸や薬用石鹸よりも上です。これで食器洗いはもちろん、洗顔、入浴、手洗いなど、すべての用途に事足ります。
 ただし、台所用という表示で届け出ている固形石鹸は、指定成分を表示しなくていいので、中にはエデト酸塩や香料などを添加しているものもあるかもしれません。「無香料・無着色」と表示してあるものも、勘ぐれば、防腐剤やエデト酸塩(保存剤として広く使われている指定成分)は含んでいるのかもしれません。
 いちいち「洗濯用」「台所用」など、用途を表示してあるのは、家庭用品品質表示法に定められているからです。
 無添加の石鹸は、それで顔を洗おうが、髪を洗おうが、洗濯しようが、食器を洗おうが、風呂で身体を洗おうが、いっこうにかまいません。でも、法律で「○○用」と表示することを義務づけられているため、まったく同じ固形石鹸なのに、パッケージだけを変えて数種類作らなければいけないなどという非合理的なことが行われています。
 前にも書きましたが、シャボン玉石けんの「スノール」という固形石鹸は、洗濯用と台所用で包み紙の色を変えていますが、中身はまったく同じです。
 玉の肌石鹸の「白いふきん洗い」(台所用)と「New純せっけん」(洗濯用)も、どう考えても同じものでしょう。どちらも「無香料・無着色・純石けん分98%脂肪酸ナトリウム)と表示されています。ところが情けないことに、「白いふきん洗い」には「台所用以外には使わないでください」、「New純せっけん」には「洗たく用以外には使わないでください」というただし書きが……。このへっぴり腰姿勢が本物の石鹸生活にとってどれだけマイナスになっているか、メーカーは真剣に考えてほしいものです。
 洗濯用の固形石鹸にも無添加のものがあります。こちらは台所用よりやや品質が落ち、石鹸臭も強いものが多いのですが、大型で値段も安く、洗面所の手洗いや入浴用なら、これでも十分です。
 固形石鹸を使うというだけで、実はこれだけの知識を必要とします。
「私は石鹸を使っている」と思っていて、実は合成洗剤を使っているということもあるわけです。
 O157騒動のとき、薬用石鹸や消毒用石鹸がよく売れましたが、その多くは、実は「石鹸」ではありません。
 十年ほど前、全国の皮膚科専門医グループが、接触皮膚炎とアトピー性皮膚炎の外来患者百人を対象にして固形石鹸の刺激性テストをしたところ、健康保険で指定された「ハイレン石けん」(販売は三共、製造は花王)が最も刺激が強く、次いで「ミノン」(山之内製薬)、「ニュートロジーナ」(持田製薬)の順だったそうです。(『自然流「せっけん」読本』森田光徳・著)
 これらは主成分が合成界面活性剤であり、石鹸の形をした合成洗剤です。
 わざわざ高い金を出して、健康を損なっているかもしれないわけです。
 次回は洗濯用石鹸の話をします。
 
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